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ウインブルドン名物のキューに並んでみた(前編)―大会11日目

ライター 平山喜代江
ウインブルドン選手権の名物といえば、濃厚なダブルクリームがかかったストロベリー&クリームとジンベースの飲み物ピムス
そしてもうひとつの名物がキュー queue なのです。キューとは順番待ちの行列のことで、13日間全ての試合で毎日当日券が販売されるため、そのチャンスに賭けて人々が早朝から並びます。準決勝と決勝以外はセンターコートのチケットも販売されます。

今年で125周年となる伝統のウインブルドン、大会第11日目の7月1日の金曜日、このキューに並んでみました。男子準決勝の日なのでセンターコートの販売はなく、狙いは2番目に大きいNo1コート。これがダメなら、グラウンドチケット(入場券)を狙います。

ロンドン在住の友人に、ウインブルドンに行くなら「暑い格好と寒い格好が必要」といわれ、日焼け止めとサングラス、上着と傘、水やお菓子や果物などもリュックに詰め、6時03分ごろサウスフィールズ駅に到着。
ウインブルドンに向かって歩くこと7分、スチュワードなる係員がキューの入り口はこちらと案内しています。そこはウインブルドンパークの広場で、すでにここからキューができていました。
列の先頭はテント持ち込みの泊まり込み組。とにかく最後尾に並び、もらったキューカード(整理券)は386番。列を作る際のルールとマナーが記された『A Guide to Queueing』(行列の案内)も一緒に配っているのが、さすが伝統あるウインブルドンです。

行列はさらに、簡易ゲート内へと進みます。といってもまだ会場内ではなく、ウインブルドンパークのゴルフコースに設けられているキューのためのスペースで、ここで9時のチケット販売まで待ちます。芝生の上にレジャーシートを敷いて寝転がったり、本を読んだり、周りの人としゃべったり、さらにはチャリティー団体が募金活動に来たり、テレビ取材が来たり、意外に退屈することなく時間は過ぎて行きます(ただし雨が降ると大変)。トイレもありますし、飲み物や食べ物を買いに行く人も。

このキューですが、日本のようにあらゆることがテキパキと進むとは限らない英国では、日常のあらゆる場面できちんと列をつくるのは、ごく当たり前のこと。郵便局、銀行、スーパーのレジやバスの停留所……。並んでいるときにイライラしたり、怒鳴ったりする人はいません。来た順に並んで順番を待つ、ということは常識でもあり、ルールでもあるのです。ウインブルドンのような大会でも、そんな伝統にしたがって、長い長いキューができるのが、とても英国らしい、と思います。

そうこうしていると、8時50分から列が動き始め、9時10分にセキュリティで手荷物チェックを受け、ウインブルドン側に行く歩道橋を渡り、当日券を販売するゲート3へ。結局約3時間待ちで、セキュリティを過ぎ、ゲート3の売り場で9時20分にNo1コートのチケットを手に入れました。ただし、並んでいるときにスチュワードからNo1コートに入れそうという情報があったものの、実際にどこのチケットが買えるのかは買うまでわからないのが現実。試合数も多く、センターコートからNo2コートまでのチケットが買える大会9日目までは、センターコートを確実に狙う人は前日から並んだりするわけです。

試合開始の13時前には、この日のメインイベント、ジョコビッチツォンガ戦、マレーナダル戦が行われるセンターコートをよそに、No1コートへ。座席は何と1番前! ここでロドラ/ジモニッチ組vsブライアン兄弟の男子ダブルス準決勝、ヒンギス/ダベンポート組vsオースティン/リナルディ組のインビテーションダブルス(引退した名選手を招待してプレイしてもらうゲーム)、さらには男子のインビテーションダブルスも観戦。

No1コートの試合終了後は12番コートへ移動し、強打者ペアのストーサー/リシツキ組とタナスガーン/エラコビッチ組の女子ダブルス準決勝を日没サスペンデッドとなる21時30分まで観られました。


これだけ堪能してチケットのお値段は、No1コートのチケット代である32ポンド(約4,500円)だけ! 朝、私の前にキューに並んでいたカップルは、15時から販売されるセンターコートのリセールチケット(指定席チケットの再販)を求め、入場後、さらに4時間以上並んでいました。

後編に続く)

英ポンドレート:
1STG=137.70円(2011.08.10現在)
(スターリング・)ポンド。STGの代わりにGBP表記もある。通貨記号は£
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ウインブルドン選手権
 テニス世界4大大会(グランドスラム)のひとつ。全英ローンテニスクラブが1877年に選手権を開催してから、今年で125周年と4大大会で最も長い歴史を持ち、現在では芝のコートで行われる唯一の大会です(1915〜1918年と1940〜1945年の戦争中は中止)。白を基調としたウエアとシューズを着用するのも伝統。他の3つは全豪オープン、全仏オープン、全米オープン。


センターコート
 テニスの大会は会場内にある複数のコートで同時にさまざまな試合が行われます。なかでも、会場中央にある一番大きなコートをセンターコートといい、トップ選手たちによるメインの試合が組まれます。15,000人収容で、2009年には開閉式の屋根が付きました。特にウインブルドンのセンターコートと、次に大きいNo1コートは、グランドスラムのときだけ使用され、それ以外の時期は芝を育てて整備をしています。


日没サスペンデッド
 照明設備がないウインブルドンでは、日が暮れて暗くなると試合を一時中断(サスペンド)し、後日その時点から再開されます。これにより、数々のドラマも生まれ、2011年にはアイズナーとマユ戦が2度の日没サスペンデッドとなり、3日間にわたって行われた試合はウインブルドン最長記録となりました。日本人にとって忘れられない日没サスペンデッドは1996年の女子準決勝の伊達公子とシュテフィ・グラフ戦。伊達が2セット目を取り返して流れをつかんでいたものの、翌日に持ち越され、結局負けてしまった試合は今も語り草。


ストロベリー&クリーム
 クリームをかけたイチゴを食べながら観戦するのがテニスが宮廷スポーツだったころからの伝統的な習慣。ケント州で収穫されたイチゴが翌朝5時30分に届けられ、1つにつき10粒以上入っているのが決まりです。ウインブルドン期間中は28,000kgのイチゴ、7,000リットルのクリームが消費されるとか。


ピムス
 リキュールや果物のエキスを配合したジンベースのカクテル。1823年に作られて以来、英国紳士の間で人気となり、ウインブルドンはじめ、ロイヤルアスコット競馬、ヘンリーロイヤルレガッタのボートレースなどの観戦時に飲まれるようになった伝統的な夏のカクテルです。


●選手編

ノバク・ジョコビッチ
ジョコビッチ
 セルビア出身。愛称はノール。今年のウインブルドンで優勝し、ついに世界ランキング1位に。選手のモノマネを披露するなどひょうきんかつエンターテイナーな一面も。3月の東日本大震災後には「サポートジャパン」とテーピングに書いて試合に出たり、他の選手に呼びかけてチャリティーサッカーを行ったのもジョコビッチでした。


アンディ・マレー
マレー
 スコットランドナショナルチームのテニスコーチのお母さんの影響でテニスを始めたマレー。イングランド人のティム・ヘンマンよりも人気が劣っていたものの、今や大英帝国の期待を背負う存在に。シングルス自己最高ランキングは2位ですが、なかなかナダル、フェデラー、ジョコビッチの壁を超えられません。このまま第4の男であり続けるのか?


ラファエル・ナダル
ナダル
 出身地であるスペイン、マヨルカ島に今も住むなど、地元をこよなく愛するテニス界のスーパースター。コーチは叔父さんのトニ・ナダルが無償でやっています。これは金銭による上下関係を作らないためとか。試合中、ナダルがウエアを着替えるときは、女性客の視線が一斉にナダルに集中。2010年の来日時には、築地にある寿司店「すしざんまい」に行った日本食好き。


ジョー=ウィルフリード・ツォンガ
ツォンガ
 フランスの選手。2007年には、英国のヒーロー、ティム・ヘンマンを破るなど活躍が目立つようになり、その風貌がモハメド・アリに似ていると英国で話題に。今年は、ウインブルドンの前哨戦となるクイーンズではナダルを破り、ウインブルドンではフェデラーを破りベスト4になりました。


ロドラ/ジモニッチ組
ロドラ/ジモニッチ
 フランスのミカエル・ロドラとセルビアのネナド・ジモニッチによるペア。2010年のデビスカップ(男子テニス国別対抗戦)での敵同士が、今年はペアを組んで出場。ロドラの敗戦によってデビスカップ決勝でフランスが負けた瞬間、わんわん泣いていた当人とそれをなぐさめるフランスチームの姿は忘れられません。ジモニッチはブライアン兄弟のジャンプの真似をしたり、意外にお茶目。


ブライアン兄弟
ブライアン兄弟
 アメリカのボブ・ブライアン&マイク・ブライアンによる双子の兄弟のペア。ボブが左利き、マイクが右利き。ポイントを取ったときにガッツポーズでなく、飛び上がって胸と胸をぶつける「チェストバンプ」をするのがお約束。ウインブルドンの男子ダブルスも優勝し、グランドスラム通算11回の優勝となりました。


サマンサ・ストーサー
ストーサー
 オーストラリア出身。愛称サミー。鍛えられた右腕から繰り出される正確なサーブ、トップスピンを効かせたフォアハンドが持ち味。ダブルスでは全米、全仏の優勝、全豪、ウインブルドンで準優勝という成績を残しています。今年のウインブルドンもドイツのリシツキと組み、準優勝。2009年に大阪のHPオープンでの優勝経験もあり、日本好きとして知られています。



「全英ローンテニスクラブ」
サウスフィールズ駅からウインブルドンを目指します
「全英ローンテニスクラブ」(拡大)
上図の拡大:All England Lawn Tennis Club 全英ローンテニスクラブ とは、まさにウインブルドンのこと。

キューの先頭は泊まり込み組
キューの先頭は泊まり込み組でした

スチュワードがキューカードをくれる
行列に加わると、スチュワードがキューカードをくれます

ピクニックのノリです
待っている人たちはピクニックのノリ

テレビの取材も
テレビの取材も入り、盛り上がる

ダンディなスチュワード
ダンディなスチュワードが案内してくれます

ゴルフクラブ側に移動
簡易ゲートをくぐってゴルフクラブ側に移動します

ゴルフクラブの横にて
ゴルフクラブの横、この状態で数時間待ちます。レジャーシートは必需品

ゲート3のチケット売り場
やっとゲート3のチケット売り場に到着。どこのブースで買うかの咄嗟の判断が座席の善し悪しにつながるようです

No1コートの一番前の席
No1コートの一番前の席! 並んだ甲斐がありました

リセールチケットに並ぶ人たち
リセールチケットを求めて並ぶ人たち

名物ストロベリー&クリーム
名物ストロベリー&クリームは2.50ポンド。クリームをかけただけで、砂糖は入っていません

史上最長試合記念のプレート
史上最長試合が行なわれた18番コートには記念のプレートがありました。最終セットのゲームカウントは70-68!


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