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『汚(けが)れなき祈り』  〈旅の誘い度★★★
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カンヌ映画祭で2部門受賞の注目のルーマニア映画
『汚(けが)れなき祈り』  〈旅の誘い度★★★

ライター(ルーマニア観光局公認アドバイザー) 川上・L・れい子
カンヌ映画祭で脚本賞と女優賞を受けた映画『汚(けが)れなき祈り』が3月16日に公開される。修道院を舞台に、暗くも自然豊かな風景、伝統のある行事、分かち合い思いやりを示す素朴でのどかな人など、ルーマニアの魅力がにじみ出るよい映画だ...

ライター(ルーマニア観光局公認アドバイザー)川上・L・れい子

『4ヶ月、3週と2日』で、2007年カンヌ国際映画祭の最高賞(パルム・ドール)受賞に輝いたクリスティアン・ムンジウ監督の最新作『汚(けが)れなき祈り』が、日本でも2013年3月16日に公開される。この作品は、2012年同映画祭の脚本賞と女優賞を受賞、再びムンジウ監督の作品が脚光を浴びることとなった。

本作で描かれるのは、2005年にルーマニアの修道院で実際に起きた悪魔憑き事件。5月6日に迎える今年のルーマニア正教会のイースターを前に、毎年多くの観光客が修道院を訪れるなか、ルーマニアを訪れるなら、ぜひチェックしておきたい注目の作品だ。

幼少期に同じ孤児院で育ち、今はドイツに出稼ぎに出ているアリーナと修道女として歩むヴォイキツァ。かつての2人の関係には戻れない心のすれ違いから、精神を患ってしまうアリーナを救うため、修道院で壮絶な悪魔祓いの儀式が行われていく。

モルドヴァ地方
舞台となるのは、カルパチア山脈の東側、緑豊かな丘陵と平原が広がるモルドヴァ地方。世界遺産の「モルドヴァの修道院群」があるルーマニア観光のハイライトとも言える地域だ


注目してほしいのが、スクリーンに映し出されるルーマニアならではの風景や文化。事件があったのは、モルドヴァ地方の修道院。ルーマニアの北東部、教会や修道院が国内でもひときわ多く、世界遺産の修道院群は日本のテレビ番組でもよく扱われている。実は撮影の舞台はそこではなく、首都ブカレストから1時間程の場所。しかし選ばれたキャストの大半は、結果的にモルドヴァ地方出身の俳優になったそうだ。この地域独特の方言やアクセント、そしてこの地域に根付く他人を歓待する文化がそうさせたのかもしれない。そんな地域で起きた事件に、同じくモルドヴァ地方出身のムンジウ監督自身も強く伝えたい想いがあっただろう。

クリスティナとコスミナ
映画の見所のひとつが、映画デビューにしてカンヌ女優賞を受賞したクリスティナとコスミナの演技。とてもヘビーで宗教的な題材ゆえ、誰もが戸惑うことがあったというなか、見事2人の心の揺れや感情を表現している


修道院の独特な背景はもちろん、随所に描かれたルーマニアらしさ。揺れるバスが走る凸凹道、暗い色の洋服に身を包む人たち、ひび割れた車のフロントガラス、その一方でお洒落なカフェ、外国へ出る若者たち、会話の節々に見え隠れする意識や金銭感覚の差。
舞台となる修道院では、今でも電気や水道のない質素な生活を営んでいる所が多く、ルーマニア現地を知る筆者は、映画の多くの場面設定に、そうそう! と頷くが、初めてこれを「ルーマニア」として見る観客は、共産主義時代をまだ色濃く残した「暗い国」という印象を受けるかもしれない。
それでも、なだらかな丘が続く自然豊かな風景、伝統行事への準備、分かち合い思いやりを示す素直な人たち、スクリーンから伝わるルーマニアの素朴さ、のどかさ。ジャーナリスト出身のムンジウ監督が描く世界に惹き込まれていく。

台所で料理をする修道女たち
修道女たちが台所で料理をする。かなり質素な環境で暮らしていることが分る。観光ではなかなか触れることの出来ない、修道院での生活を垣間見られるのも映画ならでは


ところで、ルーマニアのイースター時期、取材や撮影も多くにぎわいを見せるのだが、現地はまだ寒いことが多い。ルーマニアの北の地域では春は朝晩の冷え込みも厳しく枯れ木も残る。ただイースターならではの神秘的な風景、街・村の人々が神聖なる光(ろうそくの火)を修道院から大切に持ち帰る人たちの姿はとても幻想的で美しい。
世界遺産の「モルドヴァの修道院群」の外壁フレスコ画などは青空の下で映えるので、訪れるなら初夏の方がお勧め。『汚(けが)れなき祈り』を鑑賞し修道院に想いを馳せたら、GWから初夏にかけてのルーマニアへぜひ! 

来日したクリスティナとコスミナ
プロモーションのため来日したカンヌ女優賞受賞のクリスティナとコスミナ。 笑わない役柄だっただけに笑顔が印象的だった。
写真左/クリスティナ・フルトゥル(Crisitina Flutur:アリーナ役)は78年ヤシ生まれ、ヤシの大学卒業後、クルージュで演技を学ぶ。2004年から現在でもナショナル・シアター“Radu Stanca” の女優として舞台に立つ。本作で映画デビュー
写真右/コスミナ・ストラタン(Cosmina Stratan:ヴォイキツァ役)は84年ヤシ生まれ。ジャーナリズムと広告を学び、ブカレストの芸術大学で演技を学ぶ。週刊誌のジャーナリスト、TVレポーターとして活躍。長編映画では本作がデビュー作


撮影協力:スマイルフォト片瀬


◆旅の誘い度★★★

■作品DATA

『汚(けが)れなき祈り』

原題:DUPA DEALURI (英題:BEYOND THE HILLS )
 (2012/ルーマニア・フランス・ベルギー/ルーマニア語/カラー/152分)
 第65回カンヌ国際映画祭 女優賞&脚本賞 W受賞
製作・監督・脚本:クリスティアン・ムンジウ(『4ヶ月、3週と2日』)
原案:タティアナ・ニクレスク・ブラン
出演:コスミナ・ストラタン、クリスティナ・フルトゥル、ヴァレリウ・アンドリウツァ、ダナ・タパラガ
配給:マジックアワー
協力:コムストック・グループ
後援:ルーマニア大使館
URL:『汚(けが)れなき祈り』公式ホームページ

★2013年3月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか、全国順次ロードショー

※このページで使用した場面写真の著作権は Mobra Films - Why Not Productions - Les Films du Fleuve - France 3 Cinema - Mandragora Movies
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