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第15回 幻の「ボルネオ国際マラソン」

『地球の走り方Travel & Run!』編集担当:山崎宏之
世界のマラソン大会を扱う『地球の走り方 Travel & Run!』を担当して数年。さまざまなハプニングに遭遇しても、駆け抜けてきた私。その私の走りの前に、超弩級のアクシデントが・・・

『地球の走り方Travel & Run!』編集担当:山崎宏之

取材にハプニングはつきものである。

世界のマラソン大会を紹介する雑誌『地球の走り方 Travel & Run!』の編集を担当してからモンゴル、ジャマイカ、サイパンなどを走り、さまざまなハプニングに遭遇してきた。少々のことでは驚かなくなり、疲労や痛みにも強くなった。
が、今回の取材で受けた衝撃は大きかった。
取材しようと旅立ったマラソン大会は、マレーシアのボルネオ島で開催される「ボルネオ国際マラソン」。「日本から一番近い熱帯ジャングル」を持つボルネオ島で開催されるとあって、大会に加え、観光も楽しめそうだ。日本を発ったのは、ゴールデンウィーク後半戦が始まろうとする5月2日のことである。

ボルネオ島の玄関口コタ・キナバルに飛行機で降り立ち、南国特有の熱気と湿気を含んだ空気を直に感じられる屋外にテーブルが並ぶお店で、まずは腹ごしらえ。マレーシア名物「肉骨茶」を食べた。「肉骨茶」とは中国福建省由来の料理で、豚のバラ肉を漢方系のスパイスで煮込んだスープのこと。マラソン大会を前に、滋養強壮など薬膳的効果が期待できそうだ。


「佑記茶室」 肉骨茶


夕食には、今回の取材に協力してくれたサバ州政府観光局のHumphreyさんも同席。マラソン取材の打ち合わせをする予定だった。しかし、開口一番、Humphreyさんから驚きのひと言が!

「大変言いにくいんだけど……、マラソン大会は延期になったんだ。」

かじっていたバラ肉を、口から落としそうになった。
えっ!何ですって!?

実は、マレーシアはこの時、総選挙に沸いていた。それも、56年間続いた政権が野党連合と政権交代する可能性があるというマレーシア国民としては目が離せない大一番である。そして、悪いことにその選挙がマラソン大会と完全に重なってしまったのだ。警備などの人員をマラソン大会ではなく、選挙に回さなければならない事情もあるようで、当局も苦渋の決断を迫られ、結果として大会延期となったようだ。


政党の旗が街のいたるところで
政党の旗を街のいたるところに掲げるのがマレーシア流。選挙ポスターより旗のほうが多い。

事情が事情なので仕方ない。
始まろうとしていたマラソン大会取材は早くも終わった――。

今回のメインディッシュと呼ぶべきイベントを失い、それから数日はボルネオ島で気になるアクティビティや観光スポットなどを取材して回っていた。

そんな折、おもしろい噂を聞きつけた。facebookなどで募った有志だけで、大会が開催されるはずだった5月5日の夜に非公式なマラソン大会を開催する、というのだ。どのくらい参加者が集まるかは分からないけれど、これは気になる! その夜、ランニングウエアを着て、撮影機材を背負い、マラソン大会のスタート・ゴール地点でもある「Likas Sports Complex」に向かった。


皆、笑顔でスタートの合図を待つ
本番のマラソン大会さながらの活気。皆、笑顔でスタートの合図を待つ。

夜も9時を過ぎているのに、そこには、100名を超えるランナーがすでに集まっており、日本人参加者も5〜6人含まれていた(最終的な参加者は約300名)。皆、マラソン大会参加の機会を逸した仲間で、いわゆる「運命共同体」のような一体感が生まれている。


サポータの人たち
サポートバイクのボランティア(左)と、私設エイドステーション(右)

これは大会主催者も完全に非公認の、「有志で勝手に行われた大会」である。そのため、車道の交通が規制されているわけでも、等間隔に立って誘導してくれる人がいるわけもない。しかし、マウンテンバイクに乗り、ランナーが交通事故に遭わないように守ってくれる人や、車にドリンクや補給食を積んで路肩でエイドステーションを設置してくれているボランティアが現われて、ランナーをサポートしてくれた。

フルマラソン、ハーフマラソン、それぞれ時間をずらしてスタート。
私は、道に迷わないよう、サバ州政府観光局 コタキナコと、今回、日本から同行しているランナーの3人でハーフマラソンに挑戦した。タイムは手元の時計で測るしかない。


幹線道路に出るまでの少し暗い道
幹線道路に出るまでは、少し暗い道が続く。反射材を身に付けるのがおすすめ。

暑い国でのマラソン大会は、まだ夜が明ける前の早朝にスタートすることが多い。今回、走ったのは夜間だったので、コースの雰囲気は本番に近いものがあると思う。

ボルネオ島というと、夜は真っ暗闇のような先入観があった。しかし、州都コタ・キナバルは都会なので、基本的に数メートルごとに街灯があり、道もきれいに舗装されている。走り始めて2kmもしないうちに海岸線へ出る。3kmくらい、ずっと夜の海を見ながら走れる気持ちの良いコースだ。路肩や歩道を走っていると、車道を走る車から声援やクラクションでの応援があり、そのたびに笑顔で手を振った。


昼間のコース
コースを昼間に撮影したもの。ドリアン売りは日中も路肩にいる(右)。

途中、橋にさしかかったとき、橋から夜釣りを楽しんでいる若者に出会ったり、路肩に停めた車にドリアンをギュウギュウ詰めにして売っている光景を見たり、コタ・キナバルの「日常」のなかを走っている感覚がたまらなく楽しかった。夜ではあるけれど、治安が悪い感じはしない。

10km地点手前でコースは、マレーシア大学サバ校(UMS)の広大な敷地内へ。校内はそれまでより街灯の数が減るので、夜空に瞬く星を眺めることができる。ハーフマラソンのコースはこの大学で折り返す。フルマラソンはハーフマラソンと共通のコースに加え、幹線道路をさらに先まで走る設定だ(実は、この大学の中で道に迷ってしまい、最終的にハーフマラソン以上の距離を走ることに……)。

ヘトヘトになってようやくゴールへ帰ってくると、ボランティアの方々が、明るい笑顔で迎えてくれて、フルーツや飲み物をふるまってくれた。

スタートするとき、「道が暗いと危ないから」と若いマレーシア人の女性が自分の持っていた小さなライトを手渡してくれた。返すことができないかも知れないので、一度は遠慮して断ったのだが、それでもなお「持っていって」と差し出してくるのでお礼を言って受け取った。結果的には、街灯が多く、ライトがなくても大丈夫だった。しかし、ゴールした後、そのライトの小さな灯りがずっと手の中にあって、自分を励ましてくれていたことに気づいた。ゴール地点でもう一度その女性に会え、無事にライトを返せたのは本当に偶然のことだった。英語ではなく、日本語で「本当にありがとう」と心からお礼を伝えたい、そんな気持ちになった。

コースの中に絶景があるわけではないし、沿道に絶えず応援があるわけでもない。でも、今回の有志が作ってくれた大会で感じた温かさ、南国ならではのおおらかさは、本番の大会でもきっと味わえるはずだ。

この「裏・ボルネオ国際マラソン」から、2週間ほど経った2013年5月中旬、延期で開催時期が未定となっていた「ボルネオ国際マラソン」の日程が決まった。2013年8月25日(日)、満を持して大会が開催される。エントリー期間も延長されたので、下記公式サイトからエントリーしてみてはいかが? 夏の熱い思い出になること、必至だ。エントリーの締め切りは2013年6月30日。

マラソン大会と合わせて楽しみたい、「自然の宝庫」ボルネオ島でのアクティビティや見どころについては、次回の記事にて紹介します。


■Data

ボルネオ国際マラソン

新・開催日:
 2013月8月25日(日)
開催地:
 マレーシア サバ州 コタ・キナバル
開催種目:
 10kmラン・ハーフマラソン・フルマラソン
参加資格:
 10kmランは10歳以上、ハーフマラソンは14歳以上、フルマラソンは18歳以上
参加者特典:
 参加記念Tシャツ・完走メダル、完走証明書(オンラインからダウンロード)、完走Tシャツ(フルマラソンのみ)
制限時間:
 10kmランは2時間、ハーフマラソンは3時間30分、フルマラソンは6時間30分。
エントリー締切日:
 2013年6月30日(日)

URL:
 「ボルネオ・インターナショナルマラソン2013」(日本語)
 http://borneomarathon.com/jp

 下記サイトでは「ボルネオ国際マラソン」の情報ほか、最新のコタ・キナバル情報を入手できます。
 「サバ州政府観光局 コタキナコ」(日本語)
 http://kotakinako.wordpress.com

※今後、実施要項が変わる可能性がありますので、最新データは上記URLにてご確認ください。


『地球の走り方Travel & Run!』(地球の歩き方MOOK 2013->2014)

■書誌DATA

雑誌名:『地球の走り方Travel & Run!』(地球の歩き方MOOK 2013->2014)

発売日:2012年9月7日(金)

特 集:17大会のコースマップ+実走リポートのほか、マラソン大会の選び方、トレイル・ランニング入門などの記事を掲載
ホノルル、ゴールドコースト、台北、パリ、バンクーバー、ケープタウン、アムステルダム、ローザンヌ、サンフランシスコ・ナイキ・ウィメンズ、レゲエ(ジャマイカ)、エルサレムの11大会。国内マラソンは大阪、神戸、横浜、東京、名古屋、京都の6大会。合計17箇所すべてを実走取材。17大会のコースマップ+実走リポートのほか、マラソン大会の選び方、トレイル・ランニング入門などの記事を掲載。
※ボルネオ国際マラソンの記事は掲載されていません

定 価:980円(税込)

発 行:ダイヤモンド社

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