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イタリア編〜ゼルテン アルト・アディジェ風〜
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クリスマスの伝統お菓子
イタリア編〜ゼルテン アルト・アディジェ風〜

地球の歩き方編集部:欧羅巴三太


この時期クリスマスに向けて華やぐヨーロッパで、昔から愛されている定番のお菓子を集めてみました。前回の特集に続く第5弾はイタリアのゼルテン アルト・アディジェ風(Zelten dell'Alto Adige )をご紹介します・・・

地球の歩き方編集部:欧羅巴三太



クリスマスの伝統お菓子今年も残すところわずかとなりました。大切な人との語らいに、がんばった自分へのご褒美に、甘いお菓子でひと息入れませんか? この時期クリスマスに向けて華やぐヨーロッパで、昔から愛されている定番のお菓子を集めてみました。
ヨーロッパのクリスマス伝統お菓子、第5弾はイタリアのゼルテン アルト・アディジェ風(Zelten dell'Alto Adige )をご紹介します。
■⇒第1弾 ドイツのシュトレン(Stollen)はこちら■⇒第2弾 ベルギーのスペキュロス(Speculoos)はこちら■⇒第3弾 スペインのトゥロン(Turron)はこちら■⇒第4弾 フランスのトレーズ・ディセール・ド・プロヴァンス(13 desserts de Provence)はこちら■⇒第6弾 スロヴェニアのポプルトゥニク(Poprtnik)はこちら■⇒第7弾 イギリスのミンスパイ(Mince Pie)はこちら■⇒第8弾 イギリスのクリスマスプディング(Christmas Pudding)はこちら
クリスマスの伝統お菓子
クリスマスの伝統お菓子イタリアのゼルテン アルト・アディジェ風(Zelten dell'Alto Adige )国民の95%がカトリック信者の国・イタリアでは、イエス・キリストの降誕を記念し祝うナターレ(クリスマス)はとても大切な年中行事です。この日ばかりは誰もが遠方からも家路へと向かい、家族皆で静かに過ごします。
そんなイタリアでクリスマス伝統のお菓子といえば、真っ先に思い浮かぶのはふっくらドーム型に焼かれたパネトーネPanettoneでしょうか? 日本でもおなじみのドルチェ(イタリア語で甘いもの、スイーツ)で今や一年を通して店頭やカフェでもお目にかかれますが、もとは北イタリアのロンバルディア州の州都ミラノが発祥の地で、クリスマスのときにだけ食べる特別なお菓子だったのをご存知ですか?
郷土色豊かなイタリアの食文化は当然ながらドルチェにもおよび、イタリア全土では本当に多種多様なクリスマスを祝う伝統のドルチェがあります。パネトーネもそのうちのひとつでしたが、20世紀初頭に難しい製造工程をクリアして工場生産化に成功、大量生産が可能になったことで国内はもとより海外にも広く輸出されるようになり、一気に有名になりました。
そんな全国区人気のドルチェがある一方、各家庭やパスティッチェリーア(pasticceria イタリアの菓子店)で代々のレシピを受け継ぎ、昔ながらの製法を守り続けて地元の人々に長く親しまれているクリスマスのお菓子がたくさんあります。今回ご紹介するゼルテンも、そんな愛すべきドルチェです。
ゼルテン、というイタリア語の響きにやや違和感があるとすれば、このお菓子の名前がドイツ語のselten(ゼルテンと発音)に由来しているから。ドイツ語のseltenは英語のseldomに相当し、その意味は「めったに・・・ない、珍しい」、そう、年に一度クリスマスを祝うための特別なドルチェだったことが偲ばれます。
ゼルテンには「アルト・アディジェ風」と「トレンティーノ風」の2種類があり、いずれもトレンティーノ=アルト・アディジェ州の郷土菓子です。
同州は北イタリアのてっぺん東寄り、オーストリアとスイスに国境を接する風光明媚な州で、イタリアに5つある特別自治州のひとつです。イタリア最北部の県で“南チロル地方”とも呼ばれ、かつてのオーストリア領から併合された地域を含むアディジェ川上流域(=アルト・アディジェ)のボルツァーノ県と、800年余もの間、宗教都市として栄えてきたトレンティーノ県のふたつを擁します。
ボルツァーノ県では歴史の変遷を通じドイツ語を母語とする住民が半数以上いるとされており、イタリア国内で唯一、イタリア語、ドイツ語、ラディーノ語(県北東部に広がるドロミテ山塊などで話されるロマンス語群)の3つを公用語と定めています。県都のボルツァーノに及んでは70%の住民がドイツ語を母語としているそうで、ゼルテンの名がドイツ語から来ているのも自然な成り行きだったと思われます。
今回ご紹介のゼルテン「アルト・アディジェ風」はそんなわけで、イタリア最北エリアで冬を迎えるドルチェということになりますね。
さて肝心のお菓子の内容はというと・・・。ライ麦の生地をベースに、干したブドウやイチジク、ディーツ(西洋なつめやし)、砂糖漬けのレモンやオレンジの皮を細かく刻み、松の実、シナモンやクローブなどのスパイス、ラム酒やブランデーなどを混ぜ込んで成形した上に、胡桃、アーモンド、ドレインチェリー(砂糖漬けのサクランボを赤や緑色などに着色したもの)などでびっしりと同心円状に飾り焼いたもの。かたちも丸型や正方形、楕円形、ハート型などさまざまです。
焼き上がりには表面にたっぷりの蜂蜜を塗って仕上げます。生地に加える砂糖の量は、小麦粉とバター、卵をベースとした焼き菓子風のトレンティーノタイプに比べて極端に少ないかまたは砂糖そのものは加えず、果糖と蜂蜜の濃厚な甘さが引き立ちます。
見た目もインパクトがありますが、ドライフルーツとナッツがぎっしり入った生地はずしりとした重さ。艶やかに蜂蜜でコーティングされたゼルテンは長期保存が効き、またそのほうが生地がなじんで風味が増すということで、クリスマスの日を迎え待つアドベント(待降節)の期間である約ひと月ほど前あたりから作られることが多いそうです。また家族全員が製作に携わるとも、年頃の女性にはゼルテンの出来映えで未来の夫を暗示するともいわれ、家族の絆を確かめ未来に幸あれと願う象徴でもあったようです。
ちなみにボルツァーノはイタリアでは果実の大生産地で、果物栽培やワインづくりが盛んな土地柄でもあります。イタリアではローマ時代から、甘味料の主役はブドウの搾り汁を煮詰めたものでした。また蜂蜜も使われたものの当時はまだ貴重で、どちらにも甘みを強化させるためイチジクの煮汁を加えたりもしていました。
16世紀に入り、大航海時代の産物として高級品ながらも砂糖が流通するまで、イタリアではこのブドウと蜂蜜がドルチェの甘味を支える材料でした。特に14世紀に端を発したイタリアのリナシメント(イタリア語でルネサンス期)で繁栄の中心となった北イタリアでは、ローマ時代に好まれたというアグロドルチェ(アグロ=酸味、ドルチェ=甘味で甘酸っぱい)味が好まれ、ベリー類が豊富に収穫されるボルツァーノ地域では肉料理に甘酸っぱいベリーソースを合わせる料理が今なお多く、砂糖だけのシンプルで軽やかな甘さがドルチェの主流となるのは18世紀以降だといわれています。
“蜂蜜のように甘い人生”とはイタリアでよく使われるたとえですが、たしかに砂糖にはない、深く濃厚で甘美なよろこびを味わいつつクリスマスを大切な人と過ごすのには、うってつけのお菓子かもしれませんね。

■DATA
「地球の歩き方」ガイドブックシリーズなら・・・「ガイドブック A11 ミラノ、ヴェネツィアと湖水地方」にはトレンティーノ=アルト・アディジェ州の魅力クリスマスマーケットが有名なボルツァーノやブレッサノーネ、さらに町の守護聖人がサンタクロース(聖ニクラウス)というメラーノなどを収録。
また「ガイドブック A09 イタリア」では同州を含む各州の名物料理紹介コラムも見逃せませんよ。
[2015年12月更新/2013年12月]

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