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「南アフリカ共和国そのもの」が最重要キャストのサスペンス・アクション/映画『ケープタウン』

「地球の歩き方」編集部プロデューサー 栗橋大吉
「そこは神に見捨てられた街」とあり、「凄惨な殺人事件、次々と消える子供たち――そんな「コワ〜イ」ケープタウンを舞台にしたのがサスペンス・アクション映画『ケープタウン』だ・・・

「地球の歩き方」編集部プロデューサー 栗橋大吉

「十分注意してください」。外務省はケープタウンについて、こう「危険情報」を発している(「海外安全ホームページ」「南アフリカ共和国」2014年8月19日現在)。

外務省が発出する「危険情報」には4つのレベルがあるが、これは注意喚起に相当するレベルで、最も軽度のもの。「海外安全ホームページ」では次のように解説している。「その国・地域への渡航、滞在に当たって特別な注意が必要であることを示し、危険を避けていただくよう、おすすめするものです」。危険度が軽いとはいえ、穏やかで慎み深い記述ぶりに、むしろ安心感がわいてきてしまったぞ。いいのか、これで。

で、具体的にはどうなのよ、とケープタウンの「危険情報」を読み進めていく。「2013年に発表された資料によれば、人口10万人当たりの犯罪発生率は、ヨハネスブルグや南アフリカ国内の他の都市と比べて高水準となっています」、「市街中心地は、(中略)時間帯を問わず複数名での行動を心がけ、訪問先は観光名所や人通りの多い場所に限定することが賢明です」、「夜間のオフィス街は、(中略)徒歩での移動は避け、必ず車を利用するようにしてください」、「世界有数の観光地、ケープタウンですが、如何なる状況においても犯罪に対する油断は禁物です」。

むむむむむ。コワ〜イことが、実に坦々と述べられているではないか。っていうか、危ねぇじゃん、ケープタウン。

その「コワ〜イ」ケープタウンを舞台にしたのが本作。チラシには「そこは神に見捨てられた街」とあり、「凄惨な殺人事件、次々と消える子供たち――事件の真相に迫る2人の刑事は、街に潜む深い闇に飲み込まれていく」とキャッチコピーが踊っている。しかも、チラシをよくよく見てみると「R15+」とあるではないか。

きっと目をそむけたくなるようなシーン続出なんだろうな。期待というより、恐る恐る試写を観た。

冒頭ではカメラが、名高いテーブル・マウンテンからケープタウン市街へとなめるように降りていく。テーブル・マウンテンとテーブル湾が織り成す独特の景観から一転して、市街、そしてスラム街(タウンシップ)へ入っていく。このカメラワークにより、観る者は、一気に現実に向き合うはめになる。暗い歴史を背負ったかのような、誰もがイメージする「南アのスラム街の光景」がスクリーンに現れることで、この街の「危うさ」を実感することになるのだ。あとはエンディングまで一気に引っ張っていかれる。チラシの「緊張感に息もつけないサスペンス・アクション」の言葉に嘘はない。ちょっとドキっとするような残虐なシーンもいくつかあったが、フランス推理小説大賞ほか7つの賞を受賞した小説を原作とするだけに、視覚的な怖さよりこの国の歴史に根ざす「闇」を我々の心に見せつけられるような怖さがある――この作品には、南アという舞台が不可欠なのだ。

本作のパンフレットによれば、ロケは全編現地で行われたという。なかでも、ケープ・フラッツと呼ばれるタウンシップの一地区での撮影は史上初のことだという。最近は、現地ツアーでタウンシップの見学も可能になっているが、そこはまだ観光客は入れない場所。撮影時には、地元住民が警備やエキストラで協力してくれたそうだ。

このエピソードに、ちょっぴり気持ちがほっこりしてしまった。いい所じゃないか、ケープタウン。おっと、油断は禁物だ。そこはやっぱり日本じゃない。行くなら「危険情報」を十分読み込んでからにしよう。


※タウンシップとは「政府によって区分けされた住居地」のことで、アパルトヘイト時代の人種ごとに住み分けさせられていた居住区。ほとんどの場合、旧黒人居住区を指す。


Cafe pedia
刑事モノだけに「バディ・ムービー」というカタチがはまる。ゼッタイに親和性のない水と油のようなアリ(写真奥=フォレスト・ウィテカー)とブライアン(写真手前=オーランド・ブルーム)がなぜかコンビを組んで、事件の真相に迫る。オスカー俳優であるウィテカーの演技と、その存在感にあらためて感服


Cafe pedia
オーランド・ブルームが汚れた刑事役に挑む。『ロード・オブ・ザ・リング』『パイレーツ・オブ・カリビアン』の役どころからは考えられない「女にだらしがない」「酒びたり」「クスリにおぼれる」「息子とまともに会話さえできない」というしょうもないヤツ。しかし仕事だけはできる刑事という設定。鍛えられたこの肉体美にも注目!


Cafe pedia
タウンシップでの撮影が、この作品にリアリティを与えている。我々が持つ南アの過去のイメージがかってに膨らみ、この作品をより緊張感あるものとするのだ。社会派サスペンス・アクションといっても良いかもしれない。またフランス映画なのだが、作中で使用されるのは英語とアフリカーンス語。こんなところにも現実的なアプローチを感じる


Cafe pedia
風光明媚なケープタウンだが、本作ではそれは脇役にさえもならない。美しいビーチも、そこは寒々とした風と荒々しい波が支配する「事件現場」の背景でしかない。本作では有名な観光物件も登場しているので、それを探してみるのも一興


■作品DATA

『ケープタウン』

原題:ZULU
(2013年フランス、シネマスコープ、DCP5.1ch 、107分、R15+)
監督:ジェローム・サル
脚本:ジュリアン・ラブノー、ジェローム・サル
原作:キャリル・フェリー著「ZULU」
出演: オーランド・ブルーム、フォレスト・ウィテカー、コンラッド・ケンプ
配給:クロックワークス
URL:『ケープタウン』公式サイト

★8月30日(土)、新宿バルト9他にてロードショー


※このページで使用した場面写真の著作権は ESKWAD-PATHE PRODUCTION-LOBSTER TREE-M6FILMS が有しています。
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