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パリ10区の小さな奇跡 映画『バベルの学校』

「地球の歩き方」編集部:K
サラダの具材のように、それぞれが持つ特性はそのままで共存しているから―人種のサラダボール。その縮図のようなパリにあるフランス語が話せない子供たち向けの「適応クラス」。10区に存在するそのクラスを1年間取材した感動のドキュメンタリー・・・

地球の歩き方編集部:K

Photo_2アイルランド、セネガル、ブラジル、モロッコ、中国・・・。20カ国の国籍の11歳から15歳の子どもたちが世界中からパリのある中学校にやって来た。

ニューヨークのようにさまざまな人種が住む大都市を指して「人種のるつぼ」呼んだ時代があったが、人と人とは、どんなに混ぜ合わせても、るつぼで熱せられた金属のように溶けて混ざり合うことはない。そうした理由から、複数の民族(文化)が入り交じっても溶け合わない状況を「人種のモザイク」と言うようになった。その後、さまざまな色彩のサラダの具材のように、レタスやトマト、パプリカ、キュウリを混ぜ合わせてもそれぞれが持つ特性はそのままで共存しているというようすに擬して「人種のサラダボール」と表現されるようにもなった。

そんな「人種のサラダボール」の縮図のようなクラスがフランス全土に存在する。フランスには年間約3、4万人の移民の子供たちが入ってくるため、全土で840校、パリだけでも140校にフランス語が話せない子供たち向けの「適応クラス」が設置されているのだ。本作は、パリの10区に存在する「適応クラス」を1年間にわたり取材した感動のドキュメンタリーである。

14033761079_78e2df718d_z_224名の生徒たちは、家庭の事情でやって来た者、辛い母国の生活から逃れてきた者、亡命を求めてやって来た者、または単によりよい生活を送る目的でやって来た者などどんなに理由はさまざまである


登場するのは、ある女性教師(セルヴォニ先生)と彼女が人生最後に担当する「適応クラス」の生徒たちである。わずか24名の生徒なのに20の国籍を持つ「多民族学級」。そこで学ぶ生徒は、それぞれの事情を抱えて集まった11歳〜15歳のまだ幼さが残る子供たちである。

1年間におよぶ撮影のなか、フランスでの新生活を始めたばかりでの戸惑いや葛藤を教師にぶつける生徒、国籍や宗教の違う生徒同士が大声で口論するようす、ミニフィルムの撮影の際、クラスメイトの境遇に涙する生徒の姿など、カメラを意識しない子供たちのリアルな日常、そして生徒の悩みや苦難に寄り添うように、根気強く教え導いていくセルヴォニ先生の姿がカメラに収められている。

14033813540_2bec1140e0_z_4セネガル出身のラマは、長い間、父親の家族に預けられ、学校にも通わせてもらえず虐待を受けていた。13年半の長い間、母親に会うことができなかったが、今は母親とパリで暮らし、将来は、自由な女性になり、医師になりたいという夢を持っている。日ごろから反抗的な態度が見受けられるが、進級できないと伝えられたとき、その不満を先生の人種差別のせいにしてしまう・・・

『パパの木』『やさしい嘘』のジュリー・ベルトゥチェリ監督は、本作製作の動機を「20カ国の子供たちが集まったクラスと聞いて、きっとこのクラスは、異文化が混ざり合うことの豊かさを感じられるのではないかと思ったから」と語っている。「ヨーロッパのなかでも人種差別の傾向が強くなっているなかで、子供たちの一人ひとりの個性や価値観を映し出す作品をつくりたいと思い、撮影に至りました」(オフィシャルインタビューより)。

「人種のサラダボール」。その表現には、「それぞれの具材(人種や民族)がそれぞれの持ち味を活かしつつ、共存することで一皿の美味しいサラダが完成する」という人間の可能性への希望が見え隠れする。

14544700291_e6b9ef7fa4_z本作のPRで来日したブリジット・セルヴォニ先生(写真:左)とジュリー・ベルトゥチェリ監督(右)。「国や文化の違いは決して悪いことではなく、素晴らしいことなのだ」「他人を受け入れること、他人に偏見を持たずに接する。相手を理解することで人種問題もなくなり、共存していける」と監督は語る ©UNITED PEOPLE


15961707156_51c3b3cd9f_z1教師生活の最後の1年を終えたセルヴォニ先生は、24人の生徒ではなく、300人の先生を監督するフランス国民教育省の教官となっている


15986805802_3a61f39490_z1さまざまな経験を経て、子供たちが手にするものは、相手を理解しようとする柔軟な心と自分らしく生きようとする強い意志だ



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■DATA
バベルの学校

フランス/2013年/フランス語/89分
原題: La Cour de Babel
監督:ジュリー・ベルトゥチェリ
編集:ジョジアンヌ・ザルドーヤ
オリジナル音楽:オリヴィエ・ダヴィオー
サウンド:ステファン・ブエ、ベンジャミン・ボベー
ミキサー:オリヴィエ・グエナー
制作:Les Films du Poisson、Sampek Productions
共同制作:ARTE France Cinema
配給:ユナイテッドピープル

▼公式サイト
映画『バベルの学校』 /フランス パリの中学校が舞台のドキュメンタリー

☆2015年1月31日、新宿武蔵野館・渋谷アップリンクにて劇場公開!全国順次ロードショー。


※このページで使用した場面写真の著作権は Pyramidefilmsが有しています。
©Pyramidefilms

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