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ルーマニア 世界遺産 モルドヴァ地方の教会群と修道院

ルーマニア観光局公認アドバイザー 川上Lれい子(凛)
ルーマニアの見所として必ず挙がるモルドヴァ地方の教会群と修道院。オスマン・トルコと闘っていた時代のモルドヴァ公国君主たちが建設したものですが、今回は8つすべてを設立順にご紹介します・・・

ルーマニア観光局公認アドバイザー 川上Lれい子(凛)


ルーマニアの見所として必ず挙がるモルドヴァ地方の教会群と修道院。1993年から近年2010年に世界遺産に登録された8つは、当時オスマン・トルコと闘っていた時代のモルドヴァ公国君主たちの建設で、美しい壁画で知られています。「地球の歩き方 ブルガリア・ルーマニア 2015〜2016」にも5つは紹介されています(pp.277-281)が、今回コネタを含め8つすべてを設立順にご紹介します!

【1】1487年・パトラウツィ教会 Biserica Patrauti

シュテファン大公が国が困難を極めた年に設立したため、一連の修道院の中ではとても小さいものです。ただ既にその翌年建設でルーマニア修道院の中でよく知られるヴォロネッツ修道院を構想しての建築なので、モルドヴァ修道院の典型的な形で三尖塔の形をしており、この小さな修道院から始まる歴史を感じることができます。

・壁画「最後の審判」「コンスタンティヌス大王と十字架」状態は悪い


戦いで負傷した兵士達をケアする修道女のコミュニティーも収容していたパトラウツィ教会


【2】1488年・ヴォロネツ修道院 Manastirii Voronet

シュテファン大公が当時3ヶ月と3週間という記録的な早さで完成させた修道院です。トルコとの闘いが続く中、彼は地元の僧に勝利の約束をし、そのとおり大勝利を収めた印として建てられました。建築的にも装飾的にも非常に豊かな修道院で「東のシスティーナ礼拝堂」と呼ばれることも。外壁には“ヴォロネッツ・ブルー”と言われるオリジナルな青を基調の壁画が広がり、絵にはこの地方の人達の民族衣装や伝統的な楽器なども描かれています。鮮やかな青の秘密は、漆喰に鉱石が砕いて入れられているのですが、保湿効果や色の劣化を防ぐため麻やチーズも混ぜられています。

・壁画「最後の審判」「エッサイの樹」



【3】1503年・アルボレ修道院  Manastirea Arbore

少し荒れた敷地に墓地に囲まれた小さな修道院です。シュテファン大公の時代行政長官だった貴族ルカ・アルボレが自宅横に一族の礼拝堂として建設したものだったため、装飾も控えめでこじんまり。焼きレンガが使用された修道院内には彼の絵や墓もあります。壁画のベースの緑も修復の際に作業が難航した色で、蜂蜜や卵なども使われていることが最近の分析で分かってきています。

・壁画「イエスの誕生」と「主(イエス)とマリア・ヨセフを訪ねてきた賢人達」「最後の晩餐」と思われる絵柄


聖書のシーンと十字架がテーマの絵が多くある緑ベースの外壁画のアルボレ修道院

【4】1514年〜22年・聖ゲオルゲ教会(聖イオアン修道院)
Biserica „Sfantul Gheorghe” Manastirea "Sf. Ioan cel Nou”

シュテファン大公に続き領主となったボグダン3世による設立のもの。表記が修道院だったり・教会だったり、現地の地図でも統一されていないこともあるのですが、聖ゲオルゲ教会が中枢になる聖イオアン修道院となっています。現在の教会は20世紀にオーストリアの建築家により修復された時に造られたもので、赤こげ茶色のエナメルを施された屋根が特徴的です。教会内の新ゴシック風のアーチ状窓が特徴で外壁画は自然災害と戦争でほとんど破壊・劣化していますが、内部の壁画はとてもよい状態で保存されています。地球の歩き方ガイドブック2009〜2010年度版の表紙にもなりました!


自然光で美しい深い色合いは必見の内部壁画聖ゲオルゲ教会(聖イオアン修道院)


【5】1530年・フモル修道院   Manastirea Humorului

シュテファン大公の息子・ペトル・ラレシュが君主になっている時代に、ペトルの大臣ブブイオグが建設したものです。君主が建てたものではないため尖塔はありませんが、形はこの地方に一般的な伝統の三つ先端がある形になっています。屋根の紐で吊るされているかのように優美な曲線や、周りも石垣ではなく木の柵で囲まれている「オープンポーチ」が特徴です。壁画のベースカラーが、アカネから色素を取った赤色・赤褐色ですが、状態はかなり悪く判別できないものも多いのです。

・壁画「コンスタンティノープルの包囲」「最後の審判」「イエスを抱くマリア」


【6】1530年・プロボタ修道院  Manastirea Probota

質素なモルドヴァ様式と華やかなゴシック様式の組み合わせスタイルで、ペトル・ラレシュが数段階をもって建設したものです。実は修道院群の壁画の多くは、このペトル在位時代に多く描かれており、プロボタの壁画は一番最古のものなのです。1990年代にユネスコ基金で日本の専門家サポートで保存修復事業が実施され、その政府や関係者との調整や耐震補強含める修復作業は当時芝浦工業大学の三宅教授がレポートしており、文献も出されています。

・壁画「コンスタンティノープルの包囲」「最後の審判」



近くに1398年に建てられた昔の修道院廃墟もあるプロボタ修道院


【7】1532年・モルドヴィツァ修道院 Manastirea Moldovita

元々はこの場所で暮らしていた修道士が最初木製の小さな教会を作っていた場所に、ペトル・ラレシュ公が建設しました。周りには高さ6m厚さ1.2mもなる石垣と丈夫な門に囲まれた砦の赴きがあり、そこをくぐり見えてくる修道院の姿はとても印象的で美しい中庭と共によくメディアに紹介されています。無名の画家によるものですが完成に5年も費やしたと言われている壁画は太陽の光でゴールデン・イエローに見えるところがとても評価されています。

・壁画「コンスタンティノープルの包囲」「聖母マリアと子どものイエス」


【8】1581年・スチェヴィツァ修道院 Manastirea Sucevita

最近2010年に世界遺産に登録されたスチェヴィツァ修道院。司教のゲオルゲ・モヴィーラの兄で当時のイエレミア・モヴィーラ公が設立した修道院です。ブコヴィナで最大かつ最も美しい修道院と言われています。世界遺産登録が遅いのは 他の7つの修道院に比べ50年ほど建設年が新しいためです。この修道院の壁画なのですが、モルドヴァ壁画の流れを汲む兄弟のルーマニア修道士によって描かれていますが、16世紀のモルドヴァ地方の日常生活を題材にした壁画が多く、また教育的な要素・目的を持って描かれたものも特徴的で、農民の戒めのため厳しい絵を見ることができます。

・壁画「天国の梯子」「エッサイの樹」「最後の審判」

●参考URL(※現在5つの修道院のみ掲載)
ルーマニア政府 観光・商務局

参考文献
『モルドヴァの世界遺産とその修復―ルーマニアの中世修道院美術と建築』
(西村書店/羽生修二<監修>、三宅理一)

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