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イタリア中世の町の復興祈願、映画『ラスト・ターゲット』〈旅の誘い度★★★☆〉

地球の歩き方編集部:S
本作は英国の作家マーティン・ブース原作のサスペンス小説「暗闇の蝶」を、写真家であり、初の劇場映画『コントロール』を監督し数々の賞に輝いたアントン・コービンが映画化したものです。映画の舞台はローマの東に位置するアブルッツォ州で、アペニン山脈から東のアドリア海に向かって広がる山岳地帯でロケが行われました。そしてここは、2009年に三百人の死者を出したイタリア中部地震があった場所でもあります。

イタリアの田舎を移動していると、丘の上に急峻な岩山を抱くように町が広がっていて、ここへおいでと招いているような風景に出くわすことがあります。本作で暗殺者である主人公が身を隠すカステル・デル・モンテという町がまさにそのような場所で、写真好きの私としては、朝夕の光の変化を追って撮影したくなるようなところです。

劇中の主人公も周囲に疑われないように「アメリカ人のフォトグラファー(!)のジャック」と名乗り生活を始めます。(まあ、暗殺者もフォトグラファーもシューティングが仕事ですが…)確かに長期滞在の目的を写真撮影といっても不自然な場所ではありません。実際、物語の中に挿入される幻想的な町の映像や自然は、観るものを強くこの地へ誘います。

さて、気になるストーリーです。

組織に属し、孤高の暗殺者として長年生きてきた男(ジョージ・クルーニー)は、北欧の雪原を連れの女性と散歩しているところを何者かに狙撃される。スナイパーとその仲間を返り討ちにするが、一抹の疑念から連れの女性も撃ち殺し、ローマに移動する。組織の連絡係と接触した男は、しばらくは身を隠せという指示に従い、山奥の町に身を寄せる。アメリカ人のジャックと名乗り静かで穏やかな日々を送る彼は、美しい娼婦クララ( ヴィオランテ・プラシド)と出会い惹かれ合う。ある日、ジャックは組織を通じ狙撃用ライフルの依頼を受ける。クララと暮らすために引退を決意して臨んだ最後の仕事だったが、そこには恐るべき罠が仕組まれていた…。

今回のジョージ・クルーニーは少しキャラが違います。だぶん一度も笑いません。憂いや影が染み付いた、それでいて優雅な男を演じています。本作の魅力はもちろんそんな新鮮なジョージの演技にありますが、アントン・ コービン監督の写真家らしい繊細な色彩表現と際立ったフレーミングも、特筆に値します。舞台となるカステル・デル・モンテの町の魅力とその周辺の美しい自然をフィルムに収めています。

この映画には、アブルッツォの経済復興の願いも込められています。
コービン監督は2008年の冬、アブルッツォをロケ地に決め偵察がてら旅しますが、その冬が開けた3月に大地震に見舞われます。このエリアの古代都市の多くが廃墟と化しましたが、ロケ地は変更されることはありませんでした。

「あの地にはこのような映画が必要だし、この作品にはあそこのような美しい舞台が必要だ」

「撮影期間中に使う経費や完成した作品が将来この地域への観光を促すことになる」本作の撮影をこの地域で行なうことでが経済復興の助けになると考えたのです。

かつてシチリアの山奥の村パラッツォ・アドリアーノを訪ねたことがあります。前日に乗ったパレルモのタクシーの運転手は「なんで羊飼いの村に興味があるんだ?」と言いましたが、そこは、映画『ニュー・シネマ・パラダイス』舞台、ジャンカルド村でありファンにとってはひとつの聖地とも言える場所です。実際、映画のヒット以来、映画ファンや観光客も多く訪れるようになっています。映画にはそんな力があるのです。

最初、カステル・デル・モンテと聞いて、南部プーリア州の世界遺産のカステル・デル・モンテ(デル・モンテ城)を思い浮かべてしまいました。『ラスト・ターゲット』以降は、中世の城塞都市カステル・デル・モンテの知名度が浸透し、アブルッツォの観光が大きく進展することを願って止みません。ぜひ、地球の歩き方「イタリア」編にも収録したいものです。

◆旅の誘い度★★★

■作品DATA
 ラスト・ターゲット
原題:
 The American
 2010年/アメリカ映画

監督:映画
 アントン・コービン
原作:
 マーティン・ブース「暗闇の蝶」
脚本:
 ローワン・ジョフィ
製作:
 アン・ケリー 、ジル・グリーン、アン・ウィンゲート、グラント・ヘスロヴ
製作総指揮:
 エンツォ・システィ
出演:
 ジョージ・クルーニー、ヴィオランテ・プラシド、テクラ・ルーテン、パオロ・ボナッチェリ
配給:
 角川映画

URL:
『ラスト・ターゲット』公式ホームページ

★7月2日(土)より、角川シネマ有楽町ほか
全国ロードショー
ラスト・ターゲット・メイン
孤高の暗殺者。今まで、ジョージ・クルーニーが演じたことのない全く新しい役。男の警戒心や緊張がスクリーンから伝わってくる

ライフル
背中に彫られた「蝶」のタトゥーが、標的に死をもたらす男の象徴だった

抱擁
孤独な人生と別れを告げ、クララとともに生きることを決意するジャックだが…

監督
アントン・ コービン監督は、写真家らしい繊細な色彩表現と際立ったフレーミングで、舞台となるカステル・デル・モンテの町とその周辺の美しい自然をフィルムに収めている

風景_1

風景_2

風景_3

風景_4
魅力的な小さな町やアブルッツォの雄大な自然美が物語を静かに包み込んでいる。その視線はまさに写真家としてのコービン監督のまなざしである

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