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『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』『ヴァチカン美術館 4K/3D−天国への入口』
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ミュージアムが10倍楽しくなる映画2本
『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』『ヴァチカン美術館 4K/3D−天国への入口』

「地球の歩き方」編集部:S
『みんなのアムステルダム国立美術館へ』が、全国公開されたばかりですが、ミュージアムを扱った作品の公開が続きます。英国美術館の舞台裏を見る作品と、イタリアの至宝を超高精細映像と3Dで味わう作品をご紹介します・・・

「地球の歩き方」編集部:S

世界最高峰と謳われる英国美術館の舞台裏を見る、イタリアの至宝を超高精細映像と3Dで味わう、いずれも刺激的な作品

10年間の休館に追い込まれたオランダのアムステルダム国立美術館修復の舞台裏を描いた作品『みんなのアムステルダム国立美術館へ』が、全国公開されたばかりですが、ミュージアムを扱った作品の公開が続きます。

1作目は巨匠フレデリック・ワイズマン監督が英国の国立美術館、ナショナル・ギャラリーに3カ月間潜入してカメラに収めたドキュメンタリー作品『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』で、1月17日から公開中。そして、2作目は、2月28日公開予定の『ヴァチカン美術館4K/3D−天国への入口』。500年におよぶ歴史の中で、歴代の教皇たちが収集してきた世界的な芸術作品の宝庫であるヴァチカン美術館に、4K/3Dカメラを持ち込むという世界初の試みで驚愕の映像を収めています。

いずれも年間500万人以上が訪れる世界トップクラスの美術館ですが、それぞれまったく異なったアプローチで紹介されます。ただ、「アートと個人の距離を縮めてくれる役割を果たす=見た後、実際に行ってみたくなる」作品ということでは一致していますし、美術館での作品鑑賞が10倍楽しくなること間違いなしの刺激的な作品です。


ワイズマン監督は、ナショナル・ギャラリーを取材対象に決めた理由について「世界有数のコレクションがあり、2300点余りの所蔵作品は美術史上重要なものばかりであるが、同レベルの美術館に比べて小さな美術館だというのもよかった」と語っている

1作目は『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』。大英博物館と並ぶロンドンの観光名所であり、世界屈指の美術館であるナショナル・ギャラリーの魅力に迫る作品です。映画『パリ・オペラ座のすべて』などの独自なアプローチによるドキュメンタリーを得意とする巨匠フレデリック・ワイズマンがメガホンを取りました。今回、「ミュージアムを撮る」という長年の構想を実現するにあたり、2012年1月から12週間におよぶ長期取材を行い、190年もの長い間愛され続けている美術館の舞台裏、そして日常をカメラに収めています。

冒頭に登場する清掃員から、館長、学芸員、科学者、アーティストなど、ミュージアムを支える(または、構成する)ありとあらゆる人々が映像の中に収まっている。そして印象的に挿入される作品とそれに見入る鑑賞者たちの表情・・・それら一つひとつのピースが集まり、監督が捕らえた「ナショナル・ギャラリー」として徐々に像を結んでゆく

断片的に紹介される館内ガイドツアーでの、学芸員や専門家のギャラリートークは、芸術と鑑賞者を結びつけるさまざまなアイデアに満ちています。それらは、美術館が単なる作品を展示する場所であったり、芸術を高尚なものとしてありがたく崇める場では決してない、という考えに基づいています。同美術館では、ガイドツアー以外にも、裸体を描く本格的なデッッサン教室や視覚障害者のための触れて感じる立体絵画体験など、アートを楽しみ、味わうための仕掛けを用意しています。その一方で、高度な技術による作品の保存修復が行われるなど、美術品と鑑賞する者との最良の関係をどこまでも追求している姿が浮かび上がってきます。日本のミュージアムでの取り組みが早く追いついてくれることを願ってやみません。


ナショナル・ギャラリーは、1824年、ジョン・ジュリアス・アンガースタインが収集した絵画38点を政府が買い上げ、公開したのが始まりとされています。英国初の国立美術館誕生のきっかけを作ったアンガースタインはロイズ保険組合の発展に寄与した実業家ですが、ロイズの海上保険の対象の多くが奴隷船だった。このようにナショナル・ギャラリーの誕生の裏には、黒人奴隷貿易という負の歴史があることも覚えておいて欲しいと語りかけるツアーガイドの言葉が胸に残る

12週間におよぶ取材のなかで、「レオナルド・ダ・ビンチ展」「ターナー展 クロードの光」などの企画展や展示室内でのピアノリサイタル、ティツィアーノの展覧会で行われた、ロイヤルバレエ団とのコラボレーションイベント(写真)も収録されています


英国流アートの楽しみ方とは・・・

ロンドンには、大英博物館、テートブリテン、テートモダン、自然史博物館など数多くのミュージアムが存在しますが、そのほとんどが無料(企画展など特別な催しを除く)です。例えば、買い物や散策の合間にミュージアムにぶらっと立ち寄り、お気に入りの1枚を鑑賞する。などということも無料であるがゆえに気軽に行えます。隅から隅までじっくり見て元を取るぞ!などという意気込みも不要。本当に見たい作品と好きなだけ向き合えば良いのです。

ヴァチカン美術館は、世界最小の国にある世界最大級のミュージアム。
古典彫刻の傑作を始め、ルネサンス期の3大巨匠と言われるミケランジェロ、ラファエロ、ダ・ヴィンチの作品や光と影の劇的な絵画表現で近代絵画を切り開き、ルーベンス、レンブラント、フェルメールなどに影響を与えたカラヴァッジョやゴッホやダリなどの現代美術も所蔵されている


次の作品は『ヴァチカン美術館 4K/3D−天国への入口』です。
ヴァチカン美術館は、ピオ・クレメンティーノ美術館、絵画館、ラファエロの間(スタンツェ)、ブラッチョ・ヌォーヴォなどの美術館やシスティーナ礼拝堂やヴァチカン図書館や教皇庁の建物の一部などで構成されるので、イタリア語では「Musei Vaticani」と複数形(単数形:Museo)で語られます。本作では、それらの美術館に4ヵ月にわたる撮影を敢行、最新テクノロジー(超高精細映像&3D)を駆使し、臨場感のある立体映像をスクリーンに描き出します。

システィーナ礼拝堂は、教皇ユリウス2世がミケランジェロに依頼した旧約聖書の大天井画で覆われ、壁面には教皇クレメンス7世が依頼した「最後の審判」が描かれている。写真は天井画を構成する『アダムの創造』

ミケランジェロの天井画やラファエロの壁画が画面いっぱいに大写しになったとき、デジャヴのように思い起こされた記憶があります。それは、イタリアのフィレンツェの郊外にあるアレッツォ(映画『ライフ・イズ・ビーティフル』のロケ地です)という町のサン・フランチェスコ教会での体験でした。この町の最大の観光資源のひとつがこの教会に残されたピエロ・デッラ・フランチェスカのフレスコ画『聖十字架伝説』です。10数年前に訪れたときは修復中でしたが、修復用の足場からの見学ができました。画家が描いていたときと同じ目線で、間近に作品と向かい合あったときの興奮は今でも強く印象に残っています。まさに、本作を鑑賞して感じた、興奮と喜びと共通するものです。

そこに身を置かなければ体験することのできないシスティーナ礼拝堂やラファエロの間のような空間そのものを3D映像で疑似体験できるだけでなく、近くの映画館に足を運ぶだけで、そこに描かれた作品を最良の環境で鑑賞できる画期的な作品です。

1506年にコロッセオの近くにあるエスクィリーノの丘から出土した『ラオコーン群像』。当時の彫刻にはなかった激しい感情表現と非対称の構成からセンセーションを巻き起こした

『ラオコーン群像』と同様に、古代彫刻の傑作が並ぶピオ・クレメンティーノ美術館に所蔵されている『ベルヴェデーレのトルソ』。ミケランジェロが賞賛しシスティーナ礼拝堂でフレスコ画の裸身を描く際に着想を得たと伝えられる

立体物であるミケランジェロの『ピエタ』や『ラオコーン群像』『ベルヴェデーレのトルソ』などの古代彫刻はもちろんですが、もともと2次元で描かれたシスティーナ礼拝堂の天井画や壁画、ラファエロの間の壁画の3D化の衝撃は、筆舌に尽くしがたい。絵画鑑賞の領域を超えたこの試みに、描いた画家本人はどんな感想を抱くのでしょうか?


■ナショナル・ギャラリー 英国の至宝

2014年 / フランス・アメリカ合作 / カラー / 181分
原題:National Gallery
監督:フレデリック・ワイズマン
製作:フレデリック・ワイズマン、ピエール=オリビエ・バルデ
撮影:ジョン・デイビー
配給:セテラ・インターナショナル
▼『ナショナル・ギャラリー 英国の至宝』公式ホームページ
http://www.cetera.co.jp/treasure/
© 2014 Gallery Film LLC and Ideale Audience.All Rights Reserved.

☆2015年1月17日より全国ロードショー!


■ヴァチカン美術館 4K/3D−天国への入口

2013年 / イタリア映画 / デジタル3D・2D上映 / カラー / 66分
英語題:Vatican Museums
監修:アントニオ・パオルッチ(ヴァチカン美術館館長)
監督:マルコ・ピアニジャーニ
脚本:ドナート・ダラヴァーレ
出演:アントニオ・パオルッチ、パオロ・カシラギ
日本語ナレーション:石丸謙二郎
配給:コムストック・グループ
配給協力:クロックワークス

▼『ヴァチカン美術館4K/3D−天国への入口』公式ホームページ
http://vatican4k3d.com/

© direzione dei musei - governatorato s.c.v

☆2015年2月28日よりシネスイッチ銀座ほかにて全国順次 3D・2Dロードショー!

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