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きみは五体投地を見たか

「地球の歩き方」編集室:た

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祈りながら......2、3歩進んで......身を投げ出し......祈り......立ち上がって繰り返し

 チベット文化圏を旅したことのある方、あるいはチベット仏教のお寺をお参りしたことのある方は、うつぶせに寝るような姿で祈る人々を目にされたことがあるのではないでしょうか。

 五体投地。両膝、両肘そして額を順次大地につけながら祈る、チベット仏教における最もていねいな祈り方。

映画『ラサへの歩き方~祈りの2400km』は、チベット東端に住む11人の村人たちが巡礼を志し、ラサまで1200km、さらにチベット西端の聖地カイラス山まで1200km、片道合計2400kmを五体投地"だけ"で移動するさまを淡々と映した作品です。

 これまで自分が見たことのある五体投地は、気の遠くなるほど長い巡礼の道のりのほんの一部に過ぎないということを実感させられます。

 巡礼に臨む人たちにはそれぞれの生活があり、生活に根ざした巡礼への動機があり、いざ巡礼を決めたら諸々の準備があり、出発後は毎日野宿で共同生活、それを支える資材を運ぶサポート車(トラクター)の存在ありと、道程の全体像をあますところなく捉えた映像には、知らずしらずのうちに引き込まれること請け合い。同時に、道中に見られる雄大な景観の美しさも見どころです。

 主役の11人はみんなプロの役者ではなく、監督がロケハン先の村でスカウトした本物のチベット人たち。そのため、まずは長期間のカメラ撮影に慣れてもらうため、村で3ヵ月間寝食をともにしながらカメラを回し続けたのだそう。そのときに撮られた生活の所作一つひとつが、よそいきではないチベット人の日常を垣間見せてくれるのも、この映画に奥行きを与えているように感じます。

 道中には彼らの巡礼を阻むような危機や困難がいくつか訪れますが、大どんでん返しでアクロバティックに物語が展開するわけではなく、既に巡礼が日常となっている彼らなりに対処して穏やかに時を過ごしていく様子が淡々と撮影されています。じゃあ、観ているほうは退屈するのかというと、これがなぜか全然退屈しないのです。いつの間にやら観客も作中に取り込まれ、一緒に巡礼している気持ちになっているからなのかもしれません。

 巡礼の準備段階では、うつぶせに倒れた身体を保護する皮のエプロンを調達し、手にはめる木の板を自作する様子から見せてくれます。靴を大量に購入するのは、傷みが激しいから。実際、摩擦で破れた靴の爪先の描写も盛り込まれています。旅費が底を突いたら、みんなでアルバイトをして稼ぎます。

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五体投地で進める距離は1日10kmだとか。道中何事もなく続けられたとしても2400kmを移動するのにかかる日数は......

 これはドキュメンタリーではない、と監督自らおっしゃっているとおり、監督の描いた筋書きに沿って構成されたフィクションではあるものの、主役全員がホンモノで、少なくとも村からラサまでの1200kmは横着せずに五体投地を貫いているところから、かぎりなくノンフィクションとフィクションの狭間を行き来している印象を受けます。

 ただひたすらに他者の幸せを祈りながら五体投地を続ける映像から受けるチベット人の揺るぎない信仰心と粘り強い実行力。映画を見終えたとき、さすがに自分で五体投地をしながら聖地を目指そうとは思わないものの、それを行なっている人たちへの畏敬の念が芽生えていることに気づかれるでしょう。

 政治色皆無ですので、どなたさまも心安らかにご覧いただけます。


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なぜかついてきた最年少の少女タシ・ツォモ(愛称タツォ)をはじめ、初めはぎこちなかった五体投地がだんだんと無駄のない動きで上達していく様子がリアル。ざざーっと滑るのをよしとするかどうかは諸説あるそう

 映画をご覧になる前や後に、公式サイトの「制作ノート」をお読みになることを強くおすすめします。公式サイトでは予告編映像もご覧いただけます。

 この夏は、標高4000mを超える高地の涼やかな映像とともに、チベット文化の一端を知る機会を設けてみてはいかが?


『ラサへの歩き方~祈りの2400km』

上映日程:2016年7月23日(土)より、シアター・イメージフォーラム(東京渋谷)にて
以後、青森、仙台、山形、松本、横浜、川崎、高崎、名古屋、上越、金沢、岐阜、大阪、京都、神戸、松山、大分にて順次公開(2016年7月現在)

配給:
ムヴィオラ
監督・脚本:
チャン・ヤン
撮影:
グオ・ダーミン
出演:
チベット巡礼の旅をする11人の村人たち
英語題:
PATHS OF THE SOUL
公式サイト:
www.moviola.jp/lhasa

118分/中国/2015/COLOR/チベット語/DCP/16:9/DOLBY 5.1

☆ シアター・イメージフォーラムでの映画公開に合わせ、渋谷の書店にてチベット文化圏や辺境エリアの書籍フェアを開催。SHIBUYA TSUTAYAさん、文教堂 カルチャーエージェント渋谷店さん、HMV&BOOKS TOKYOさんにぜひお立ち寄りください。また、青山ブックセンター本店さんでも「地球の歩き方D08チベット16-17(特集:チベットの信仰)」を見つけやすい"五体投地POP"を展示中です!

■書籍

ラサへの歩き方 祈りの2400km

監督:
チャン・ヤン
形式:
DVD
出演:
チベット巡礼の旅をする11人の村人
発売日:
2017/04/29
時間:
118 分
amazon
⇒クリック

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